「‥‥‥え‥‥‥?」
‥‥‥蕎サン、言った矢先からそういう冗談やめようや‥‥‥ボク、怖いやんけ‥‥‥
「ああ、ポチって、うちの裏の裏の裏に住んでるお菊ばあさんが可愛がっていた愛犬だろ?‥‥そういやあ、昨日老衰で死んだって、ばあさん泣いてたような‥‥」
敦まで‥‥‥‥そんな‥‥世間話するみたいに一大事をさらっとするっと流すなよ‥‥‥っていうか、何でお前、そんな裏事情に詳しいんだよ‥‥‥
いや、まあそれは左の隅っこに置いといてだ‥‥‥
つまり‥‥ポチは死んだから‥‥幽霊?
ゴースト??
だから‥‥‥俺に‥‥‥とり‥憑い‥‥た‥‥‥?
「いやだあぁ!霊、嫌いだあああぁ!大っ嫌いだぁあぁ!」
「「うるさい」」
―ゲシッ!ボカッ!!
「げふっ!?」
頭と腰にクリティカルヒット‥‥痛い‥‥猛烈に‥‥‥
「よし、完璧や‥‥‥」
「何が!?」
ああもう、ボケツッコミのタイミングまで完璧っ!
「阿呆‥‥、払ってやったてんやないか‥‥‥ポチを‥‥‥」
‥‥‥‥‥‥(間)‥‥‥‥‥‥‥‥
「ありがとう!さんきゅうユワウェルコメ!!」
「ああ、何かお前が英語マイナス一五点なのが今の瞬間、判ったよ‥‥‥」
なんか敦が失礼なこと言ってる気がするけど、まあいいや‥‥俺は霊から解放された!
‥‥‥こほん!取り敢えず、一つ目解決〜♪‥‥さあ!次行ってみよう!!
「じゃあ、食欲なくて、胸苦しいのは?」
ワクワクドキドキ‥‥なんだかんだ言って、やっぱ力になってくれるよなあ、こいつらっ!
「‥‥まあ、握り飯6個食べといて、“食欲ない”はないと思うけど‥‥‥ずばり、その娘さんに一目惚れ!」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
「「「「「「なにいぃ!!!??」」」」」」
‥‥‥いやね、クラスの皆さん‥‥びっくりなのは、俺なんだけどね‥‥‥?そんな、声揃えて驚かなくても‥‥‥
「どうするよ!?あの由貴がっ!!あのお馬鹿が!?」
「世紀末ってことか!」
「やばい!今日から嵐が来る!こりゃもう早退するしかないだろ!」
「そうかそうか、今日は赤飯だな!!」
「嘘でしょ!?ねえ!」
当人をよそに、周りは盛り上がる。当の本人は、自分のことにもかかわらず、ただただ茫然とするばかり‥‥‥
そうかあ‥‥これがいわゆる初恋?‥‥‥なんか‥‥‥違う気もするけど‥‥‥っていうか、その場合、どっちに恋してんだろうなあ‥‥女性に?少女に?
「‥‥それが人やて誰が決めたんや?さっきから言うとるが、霊ん可能性かてあるやろが‥‥‥」
「その前にさ、そのお嬢さんはともかく、お姉さんはお前の夢の中の住人だろ?お前、自分の妄想に恋してどうするんだよ、重症だぜ?」
俺の中で、やっと解決しかかったって時、何言い出すんですか?敦さんに蕎さんや‥‥
敦と蕎のその一言で訪れたのは‥‥言うまでもなく沈黙。もう俺、なんなわけ?いやまあ、確かにさ、夢なんだけどさ。何?そしたらあのお姉さんは俺の好み?へえ、俺自分でも知らなかったや、自分の理想女性‥‥って!
―ガタン!
「納得すんなあ!俺!」
シイィィィン‥‥‥さらに静まり返る教室‥‥‥
「落ち着け!うん、そうだな‥‥お前は確かに馬鹿だ!大馬鹿だ!だから、取り敢えず落ち着いて座れ!とにかく座れ!」
何気にフォローになってねえ気がするのは俺だけか?
っていうか、何かスッゲエ酷いこと言われなかったか?‥‥‥でも、何かもういいや‥‥言い返す気力もねえ‥‥‥
―‥‥ストン‥‥‥
もう皆も他の話題に移ってる。飽きるの早いよな‥‥‥何か、嬉しいような、悲しいような‥‥‥
「‥‥ハア‥‥‥」
何か、らしくもなく溜息なんかついちゃったよ‥‥‥
「‥‥‥やっぱ、いねえのかな‥‥俺の考えすぎかなあ‥‥‥」
もう逢いたくないと言えば嘘になる‥‥むしろ、もう一度逢いたい‥‥惹かれているのは、自分でも判った‥‥格好が変わってたってのも、あるかもしれない‥‥でも、何かもっと他に理由がある気がした。俺にもそれが何なのか‥‥‥それは判らない‥‥逢ってどうするのかも、判らない‥‥ただ、もう一度逢いたかった。
「‥‥まあ、人には定められた道ってのがあるからな‥‥必然なら、また逢えるさ‥‥」
敦のやつ、フォローの続きか?わけわかんねえ‥‥‥
「お前、何教だよ‥‥」
宗教じみたことを口にする敦に、俺が聞くと、不敵な笑みを浮かべて、
「俺?‥‥俺のカミサマは俺自身‥‥敢えて言うなら“俺サマ教”‥‥かな‥‥‥」