うっわあああ‥‥びっくりしたあ‥‥マジ、怖かったんだけど、何さっきの地震!隠れるところねえし!タンス倒れて来たら、俺は今頃ペッチャンコだ‥‥うわっ‥‥想像したら鳥肌がっ!
「タンスが倒れてこなかった軌跡に乾杯だな‥‥」
それにしても‥‥まだ痛い‥‥緋岐センパイ‥‥有り得んぐらい本気でぐりぐりしやがって‥‥‥
まだ頭がガンガンするや‥‥
っと‥‥目を覚ましたかな?
「気分どう?」
聞きながら、頭の上に乗っけてたタオルを換える。
まあ、今更いうのもどうかと思うけど、ここは俺の家。
つまりだ、3日前にクロ助‥‥本名なんだっけ?ポチ??‥‥じゃなくて‥‥操鬼!俺って実は天才!?思い出しちまった!
とにかく、操鬼ってやつに襲われて、“するめ”だっけ?この娘さんの名前‥‥取り敢えず、するめに救われた。なんだけど、その直後にするめが倒れちゃって、俺が自分の家まで連れて帰ったというわけなのだ!
いや、もうこの3日間は俺にとっちゃ大変だった。
うん、もーう、いっろ〜んな意味で‥‥
『あらぁ、お友達?あらあら、気分悪いん?‥‥お酒はだめやよぅ?酔ってもうたんやろ?もう‥‥ゆうちゃんは‥‥自分が強いから言うて、人に飲ませたらあかんやろぅ?めっ!』
「めっ!」て母さん‥‥俺、何歳児だよ‥‥ってか、何で飲酒で決定されてんだ‥‥俺まだ未成年だっての!
んで、一応俺の無実を証明しようとしたら今度は姉貴‥‥‥
『♪ゆっきりんこのお・ば・か・あぁ〜、何々?人蹴飛ばした!?やあねえ、これだからおばかりんこはっ!』
『だから!これには深いわけがあって!姉貴じゃねえんだから、蹴らねえよ!』
―バッコン、ドッカン!
姉貴と、どこからともなくやって来たじいちゃんにWパンチを食らって、俺もうノックアウト‥‥
『私がいつ、あんた以外に暴力振るったよ?』
そういった、姉貴の笑顔はそりゃあもう、輝いてたさ。
『この不良孫が!!こんな夜更けに帰りおって‥‥しかも、女子を同伴で帰ってくるなど百年早いわ!』
『いやだから、これには深い訳が‥‥‥』
―ヴゥ〜‥‥グルゥゥ‥‥‥
シロの威嚇によって、俺の戦い(五分二十三秒)は終わった‥‥
一瞬の沈黙‥‥‥じいちゃんがするめの顔見ている‥‥やっぱり美人さんだから気になるのかな‥‥それとも、知り合い?
『‥‥なるほど‥‥そういうことか‥‥‥』
何一人で納得してんっすかあ!?俺もうわけわかめ!!きっと俺の隣にいる姉貴も同じ思いに違いないと踏んだ俺は、姉貴とこの思いを分かち合うべく振り返った。
が、そこには予想に反して珍しく真面目な顔して思案に耽っている姉貴が‥‥こうなりゃ母さんだ!そう思って逆を振り返ったら何気にじいちゃんとアイコンタクトしてるし‥‥何か、状況わかってねえの俺だけ、みたいなね?
そして、次のじいちゃんの一言が、俺から貴重な3連休を奪った。
『桜さん、医者の手配を‥‥紗貴、客間の準備をして来なさい‥‥由貴、とりあえず湯を汲んで来い。』
はてなマークオンパレードの俺を無視して、母さんも姉貴も、じいちゃんの言葉を受けてすぐに立ち上がる。
『‥‥なあ‥‥一体何がどうなって‥‥』
―ゴスッ!
聞きながら座り直す俺に、じいちゃんから右ストレートのプレゼントが容赦なく飛んできた。
『つべこべ言うとらんで、とっとと動け、たわけ!』
んで、何かあれよあれよといううちに3日が経過‥‥何気にしれっと姉貴は消えてるしさ‥‥
代わりに、緋岐先輩がちょくちょく来るようになって‥‥
「‥‥っ‥‥‥」
―‥‥バタン‥‥
「おい!」
おぉぉ‥‥びっくりしたあ‥‥今この瞬間、俺は現実に引き戻されたわ‥‥
「驚かせんなよな!まだ起き上がれるわけねえだろ?ちったあ考えろや‥‥」
「‥‥うるさい、余計なお世話だ‥‥無理か無理じゃないかは私が決める。」
何なんだよ、こいつは‥‥人の苦労も知らないで‥‥
「‥‥操鬼にやられた怪我を手当てしてくれたことには、感謝する‥‥かたじけない‥‥」
「‥‥え‥?‥‥あ、いや‥‥別に‥たいした事じゃねえよ‥‥」
何も映していないはずの漆黒の瞳と視線が合う、何も映していないようで、実は心の中を見透かされるような気がして、俺は思わず視線を外す。
会話が‥‥続かない。話題‥‥何か、話すこと‥‥‥聞きたいことは山ほどあんだけど‥‥いきなり聞いてもなあ‥‥“今日の夕飯なんだと思う?”は突然すぎるし‥‥“バナナの恐ろしさについて”は、内容が濃い過ぎだしなあ‥‥‥
あ!そうだ!
「お前さあ、何か怖い夢見た?」
―‥‥おぉ〜‥‥驚かれてしまった‥‥ってか、無言で問われてますこと?
「‥‥いや‥‥なんかうなされてたみたいだったし‥‥」
「‥‥私‥‥泣いていたのか‥‥?」
いや、だから会話繋がってねえし‥‥ってか、疑問系ってコトは何か答えたほうがいいのかな‥‥それとも黙ってていいのかな‥‥その前に、それは独り言?なんか、独り言のような‥‥そうでもないような‥‥どっちでショー‥‥‥
‥‥って、だぁかぁらぁ〜!なぁんでそこでそう立ち上がろうと奮闘してんだよ!この人は!!
「おいこら!お前は怪我人なんだぞ!安全第一‥‥じゃない‥‥えと‥‥そう!安静第一なんだよ!あんだあすたあぁんと!?」
「怨気はもう抜けた。それに、これくらいの傷は慣れている。‥‥それより‥‥私の右腕‥‥見てないだろうな‥‥‥」
「‥‥見てねえよ‥‥見ようとすると、シロが吠えんだもん‥‥」
「‥‥シロ?‥‥ああ、白銀のことだな。」
ここで更なる新事実発覚っ!シロの名前は白銀なのか‥‥っていうか、う〜ん‥‥何だかなあ‥‥慣れてるって?傷に??‥‥こいつ、絶対料理できないワンパク小僧タイプだな!自慢じゃねえが、俺もそうだ!
「‥‥で‥‥白銀はどこにいる?」
「ああ‥‥庭にいると思うよ‥‥それから、言い忘れてたけど‥‥助けてくれてありがとな‥‥あと、俺の名前は瑞智 由貴、ヨロシク。君は‥‥するめ‥‥だよな?」
「‥‥‥」
うを!?今、空気が‥‥空気の温度が下がったぞ!?
「‥‥私の服はどこだ‥‥‥」
か‥‥会話が‥‥会話が成り立たない‥‥ってかさ、だからなんで立ち上がるかな!?
「だから待てよな!」
うぅ‥‥思わず手、掴んじまったら睨まれてしまった‥‥‥っていうかさ、目ぇ見えてねえのに、何なんだよこの迫力は‥‥‥
「どけ‥‥」
「やなこった。何回も言ってるだろ?軽いの一言で済ませられる傷じゃねえの!しかも、目も見えてねえ奴、ほっとけっかよ、プラス俺の質問の応えは?」
「‥‥神羅‥‥神羅 翠琉だ‥‥‥で、私の服は‥‥‥」
しまった!名前“するめ”じゃなくて翠琉だった‥‥
「あらあ〜ゴメンねえ〜‥‥洗濯してしもて、まだ乾いてないんよ〜。悪いんやけど、さっちゃんの服で堪忍してやあ〜」
母さん、ナア〜イスタイミィ〜ング!もお、サイッコォ!‥‥ちぃっとのんびりし過ぎな気もすっけど‥‥‥
「私を匿えばどうなるか‥‥判っているはずだ‥‥違うか?ここには法力を感じるからな‥‥破魔の関係者ならば、もう知っているはずだ‥‥‥」
「‥‥‥破魔一族西方守護総代‥‥出雲は神羅一族の媛巫女‥‥じゃな?」
うわ!?じいちゃんいつの間に!?
ってか、何の話なんだ?俺だけ会話についてってねえんだけど‥‥‥